「Return of the Obra Dinn」良質なゲームだった(ネタバレなし感想)

「Return of the Obra Dinn」
 ーオブラ・ディン号の帰還
(PS4)

推理ゲームとか普段全然やらないんですが、これめっちゃ面白かった!
すごくよく練られたゲームでもありました。
これほとんど1人で開発したんですか?すっっっごいですね……。
十三機兵でも思ったけど、こんなの考える脳味噌がよく分からない。すごいの一言。

個人の感想としての範疇を超えて、名作と言って過言ではないです。
白黒ならではの陰影のある映像、謎を呼ぶ謎、乾いた死のにおい、広くも狭くも感じる船内の探索、主人公が追っていく喜劇のような悲劇……。
もうね、これが名作でなくて何だというのか。

クリアタイムは8時間くらいで、手帳全部埋まりました。
協力者と一緒にPSのシェアプレイでああだこうだ言い合いながらプレイしました。
自分1人だったらたぶんもっと時間かかったと思います。

本記事はネタバレなしのレビュー記事になります。

なお、プレイ済でネタバレOKな方は、こちらもどうぞ。
「Return of the Obra Dinn」オブラディン号ネタバレありキャラ感想

あらすじ

時は1802年。200トン以上の交易品を積んだ商船「オブラ・ディン号」が、ロンドンから東方に向けて出港した。その6か月後、同船は予定されていた喜望峰への到達を果たさず、消息不明扱いとなった。

そして今日、1807年10月14日早朝のこと。オブラ・ディン号は突然、ファルマス港に姿を現す。帆は損傷し、船員の姿も見えない。これを受け、東インド会社ロンドン本社所属の保険調査官が、ただちにファルマス港に派遣された。同船内を直接調べ、損害査定書を作成するために――。

「Return of the Obra Dinn」は、探索と論理的推理で展開する、一人称視点の謎解きミステリーアドベンチャーゲームである。

PSストアより

ハードとしては、PS4でもSwitchでもできます。Xboxもか。元々はSteam配信のゲーム。

5年間行方不明だった船が突然帰還しますが、60人もいたはずの船員・乗客は1人も乗っていない。
主人公は保険調査官として、「死の瞬間が見える懐中時計」を駆使し、乗員乗客60名の安否確認を始めます。

死体(まあ5年も経ってるので骨になってたり)を探して、その人物の死の瞬間を見る。
その「瞬間」から読み取れる情報で、死んだ人物が誰だったのか、居合わせた人物が誰だったのかを推理する。
ひとつ見終わったら、また死体を探して、船内を探索していく。

基本的にはその繰り返し。プレイとしてはシンプルですね。

残ってるのは骨1本だけとかの場合もあります。
でも、死体あるところには蝿がぶんぶん飛んで教えてくれるので、探すのはそんなに苦労しないです。
船内は多少入り組んでるかな?構造としてはそんなに分かりにくくもないんですが、行ける場所には全部行きましょうって感じ。

あくまで見られるのは「死の瞬間」だけなので、死んだ人が誰だったか、殺した人が誰だったか、すぐに分かるわけではない。
(その「瞬間」にきっちり名前を呼ばれていればもちろんすぐ分かりますけど、そういうケースはあんまりないです)
たくさんの「死の瞬間」を繰り返し見て、乗客乗員の名簿と、顔写真の代わりのスケッチと、照らし合わせて、60人全員の安否情報を埋めていくわけです。

推理の難易度について

これ秀逸なのは、主人公はあくまで「保険調査官」であって、警察とか探偵とかじゃないんですよね。
謎解きが目的ではなくて、死因・消息の確定だけが目的なんです。

すごくビジネスライクというかね。
とりあえず死因埋めちゃえばオッケーなんですよね。
もちろん、保険調査官として、できるだけ正確な査定は必要なんですけど……。

実は割と死因の判定には幅があって、どっちとも取れる死因であれば、どっちにしてもOKだったりする。
このゲームで追うべきは、言ってしまえば完全な事実そのものじゃないんですね。
保険調査官が認定すれば、それは事実になるんです。

死因の判定は3人ごと。
3人死因入力して、3人とも合っていれば「正解!」って感じで、手帳が埋まっていきます。
このシステムのおかげで、けっこう難易度が緩和されています。

頭はすごく使うけど、難しすぎるわけではない。
言ってしまうと、ある程度「これかこれかな?」と選択肢が絞れさえすれば、その選択肢を総当たりすれば手帳は埋まるんです。
かつ、そんな選択肢の総当たりなんてしたくなければ、確定するまで死因入力しなければ良い。
難易度調整がちょうどいい案配でした。すごい。

まあ実際には、「こんなん総当たりしないと推理だけじゃ無理だろ!!!」というのも一部あります。
推理できる人はすごいと思います。

……クリア後調べたら、手がかりが全くないわけじゃないらしかった。
でも無理だろ!!!

この3人確定システムは、そういう部分の救済策にもなってました。

難を言うと、説明書とかないんですよね。まあね、インディーゲームなのでそうだよね。
あんまりプレイ方法とか書いてないので、例えば時計がぶるぶる震えてる時とかに、何をすれば良いのか最初はよく分かりませんでした笑
とはいえ、適当にボタン押せば良いレベルなので、私の察しが悪いだけな気もします。
最近のストレスフリーゲームに甘やかされているのがありありと分かっちゃう……。

あとは全部白黒の弊害もあって、ちょっと死因や推理に必要なアイテム描写が分かりにくいこともありました。
でもこのモノクロ画面はこのゲームの雰囲気に欠かせないので……。

シナリオについて

正直、プレイ前は、何らかの理由で船員同士で殺し合ったのを、ミステリとして解いていくんだと思ってました。
デモムービーとかの台詞も、「船長の私に逆らうのか!」ですし。
駄目な人間と駄目な人間が殺し合って、一部の善良な人が被害を受けて…みたいな。

いや、上記の、間違ってはないんですよ。
間違ってはないんですけど、それだけじゃない。

死因・消息の確認が終わっても、このゲームの一部は、海の霧に包まれたまま……。
解釈は個々のプレイヤーに任されます。

海そのものの謎というか、霧の中に船が消えていくイメージ。
あと人間の業。
そういうものを感じる読後感でした。

すごく面白かったので、多少の血が大丈夫なら、是非やってみて欲しいです。
うん、白黒がだいぶ血とか緩和してますけど、身構えずにやるには、やっぱちょっとぐろいかなー。

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