シノビガミ公式シナリオ「刃魔正忍記」疑問点・考察まとめ(前編)【ネタバレ注意】

ここしばらく、シノビガミ「刃魔正忍記」を5人用シナリオに改変してプレイしていました。

改変するにあたって、元のシナリオは読み込みました。
…が、自分が「これ何で?」と思ったこと、FAQに割と答えが書いてなかったんですよね…。
でも、だからと言って下手に改変すると、どこかで辻褄が合わなくなりそうで。

考察するしかなかったんだ……。

というわけで。
こちらの記事は『正忍記・認』や『基本ルールブック改訂版』をひたすらめくりながら自分が必死で考えたことのまとめになります。
個人の考察・解釈になりますので、全てにおいて、正解かどうかは不明です!!!

シナリオ「刃魔正忍記」
(『シノビガミ シナリオ集 正忍記・認』掲載、MASASHIGE氏執筆)

引用部分の著作権は著者、出版社・発売元に帰属します。

©冒険企画局 ©河嶋陶一朗 「忍術バトルRPG シノビガミ」

「刃魔正忍記」全編(天の巻、地の巻、人・仭・神の巻)のネタバレを大いに含みます。
PLとして今プレイ中、今後プレイ予定の方は、うっかり読まないようお気をつけください!

Q1.なぜPC1は妖魔「朧丸」の瘴気を吸った「神刀・禍狩」でしか殺害できないのか

①なぜ朧丸は妖魔になったのか

朧丸が妖魔になった経緯、オリジナルの「刃魔正忍記」では語られていないんですよね……!

【朧丸 秘密】
…あなたは「十束剣」と呼ばれる魔仭の一振りだった。「十束剣」を巡る両断戦争が中断された時にあなたの力は変質し、妖魔へと変わってしまった。力を取り戻すためには、いずれシノビガミとなる王者、PC1から奪うしかない。
あなたの【本当の使命】はPC1に眠る「十束剣」を覚醒させ、手に入れることだ。変質した「十束剣」であるあなたは、「十束剣」を持つ者による攻撃でなければ【生命力】が0点にならない。…

朧丸の情報は、ほぼこの秘密に書いてある文章のみ。
妖魔化した理由として考えられるのは、下記①~④くらいかな。

①カガリによる両断戦争中断の余波で何かが起こった
②八岐大蛇が何かした
③刀匠が何かした
④両断戦争の進行で自動的に妖魔に変わるタイプの十束剣だった

ただ…天の巻で屋上の髑髏を守っている「幽々」は、蛮子なんです。
※蛮子とは、渡来人が作った妖魔のこと(基本p232)

そうなると、刀匠が原因と考えるのが、まあ妥当なところじゃないでしょうか。

なぜ朧丸は妖魔になったのか?

刀匠が原因で妖魔となった可能性が高い。

②朧丸の目的は何だったのか

正忍記p96には、朧丸は「俺は俺のために、力を取り戻す」と宣言する、とあります。
彼は何を願っていて、そもそも天の巻で、PC1を狙ってきていたのはなぜだったんでしょう。

【プライズ「十束剣」秘密】(天の巻)
PC1に眠る「十束剣」には、破邪の力が込められている。
PC1はエピローグで、妖魔化してしまった人や、何者かに憑依されてしまった人(ハンドアウト1枚分)を元に戻すことができる。
PC1が「力が欲しい」と宣言した場合、その対象をPC1が望む全てのものに変更できるが、その力を使うとPC1の身体は何者かに憑依される。

シノビガミになって何かをしたかったのか。
それとも、自分や誰かの妖魔化を解除したかったのか。

正直分からないので、GM裁量に任されているのかな。

……妖魔化の結果、少なからず、人間としての情動は失っているようにも思いますが。
朧丸、やってること結構えげつない。
自分が力を取り戻すために、一般人がたくさん通っている学園をまるごと妖魔化しようとするなんて……。
(シノビガミになって全部元に戻すからノーカン、みたいな考え方だった可能性もありますが)

カガリもそもそもは「力を求めて、刀匠の導きに従って過去に渡った」ことを考えると、十束剣は皆そういう、自分の願いを叶えるために力を求めるような人が選ばれるのかもしれません。

朧丸の目的は何だったのか?

「力を取り戻す」ことだが、その力をもって何を為したかったのかは不明。

※十束剣の破邪の力が欲しかったのなら、自分や誰かの妖魔化を解除したかったのかもしれない。また、シノビガミになりたかったのなら、何か叶えたい願いがあったのかもしれない。

ちなみに改変シナリオの裏設定では、こんなイメージ↓にしてました。

・妖魔化してすぐに、比良坂に拘束された。
・本人も拘束には同意しており、反逆意思も薄かったため、家の牢に入ることになった(比良坂の中でも、いわゆる背広組ではなく、女系の旧家出身のイメージ)。
・しかし、ある日、妖魔の力が暴走して自分の一族をほぼ全員、殺害するか妖魔化してしまった。
・朧丸は十束剣としての力を取り戻すことで、妖魔化した者を元に戻したかったが、どんどん正気を失っていっていた。

獅童タケルの秘密に突っ込もうと考えてたけど入らなかった(当たり前)
あれだけ情報量が多いシナリオで、NPCの描写あんまり濃くしてもね…とは思いますので、もし機会があれば出そうかな、程度の設定でした。

③なぜPC1は「神刀・禍狩」でしか殺害できないのか

地の巻においてPC1の殺害に制限がかかるのは「刀匠が生きている限り」なので、刀匠が何かしているのはほぼ確定で良いと思われます。
刀匠が何らかの力でPC1を守っているのでしょう。

【PC2 秘密】(天の巻)
…機関士は言う。PC1を殺すためには、未来から持ってきた「神刀・禍狩」に妖魔「朧丸」の瘴気を吸わせる必要がある、と。…

【PC2 秘密】(地の巻)
…神刀・禍狩の所持者がクライマックスフェイズで勝利すれば、神刀・禍狩の所持者はPC1を殺害できる。…

【無道侑李 秘密】(地の巻)
…あなたが生きている限り、「PC1を殺害できる」と書かれた方法以外ではPC1は死亡せず、また、NPCが勝利した場合は必ずPC1がシノビガミとなる。…

正忍記p91には、刀匠が「自らが育て上げた「十束剣」であるPC1を生き残らせ、最強のシノビガミに仕立て上げることで世界を混乱に陥れる」ことを計画していた、と書いてあります。
PC1は他の十束剣とは違い、刀匠に何らかの調整をされているのではないか。
かつ、八岐大蛇が憑依している刻阪カエデや、八岐大蛇の首の一つであるPC4(改変シナリオではPC5みぃちゃん)でも殺害できないということは、八岐大蛇由来の力でも簡単に殺害できないようにもなっているのではないか。

にも関わらず、妖魔「朧丸」の瘴気を吸った「神刀・禍狩」なら、その防壁を突破してPC1を殺害できる。

……やはり朧丸の妖魔化は、八岐大蛇由来ではなく、刀匠由来の可能性が高いと思います。

これつまり、もしPC1が朧丸を倒していたら、PC1はもう他の十束剣にはほぼ殺せない存在になっていた、ということでもありますよね。

なぜPC1は「神刀・禍狩」でしか殺害できないのか?

刀匠が何らかの力でPC1を守っているため、刀匠が生きている限り、通常の十束剣武器や、八岐大蛇由来の力では、PC1を殺害できない。ただし、刀匠が原因で妖魔化したと思われる朧丸の瘴気であれば、刀匠の守りは無効となり、PC1を殺害できる。

朧丸関係の話はここまで。
次はカガリにまつわるあれこれについて検証していきます。

Q2.なぜPC1はカガリを殺さなくてはならなかったのか

①「十束剣」とは何か

PC1は「神刀・禍狩」を得るために、カガリを殺害したわけですが。

この話をする前に、十束剣とは何なのかを整理します。
でも十束剣の概念把握、けっこう難しいんですよね……。

まず、正忍記p152に、史実として知られる十束剣について書かれています。

・日本神話に登場する神代の剣の名を冠した魔仭たち
・十四年前の十一月十一日に、その日生まれた十一人の子どもたちを渡来人「剣匠」が拐かし、「魔仭」として鍛えた
・十年後、異界から帰還した子どもたちは、邪悪な使い手たちに利用され「両断戦争」と呼ばれる災厄を引き起こした
・両断戦争後、生き残った十人の子どもたちを私立御斎学園が引き取った
・十束剣と呼ばれるようになったのは、両断戦争後
・両断戦争における魔仭側唯一の犠牲者が「カガリ」という少年
・カガリの遺言「ボクたちが争いあい、最後の一本になったとき、もっと恐ろしいことが起こる」を信じ、現在の十束剣たちは互いに交わらないよう生きている

これがつまり大元の設定なんだろうけど、「刃魔正忍記」では、この設定が大いに変更されていますよね。
事の発端は別に十一年前ではないみたいだし、渡来人の名前は刀匠だし、十束剣たちには別に使い手はいないし、両断戦争後に御斎に引き取られてもいない。
カガリが八岐大蛇を封印した、というのも、おそらく「刃魔正忍記」特有の設定と思われます。

「魔仭」については、基本p141に記載あり。
しかし「刃魔正忍記」の十束剣は、自分で魔仭の力を取り出して使うことができるなど、ここにもシナリオ独自の設定が入っています。

ともあれ、「十束剣」は人であり剣でもある「魔仭」という存在です。
その身体の裡には武器となる「剣」そのものがしまわれている。

【PC1の記憶 秘密】(天の巻)
PC1は幼い頃に渡来人・刀匠に誘拐、改造された「十束剣」と呼ばれる十一人の魔仭の一人だ。…

【十束剣 秘密】(天の巻)
PC1に眠る十束剣には、破邪の力が込められている。…

【PC4 秘密】(天の巻)
…あなたの身体にはプライズ「禍狩の欠片」が埋まっており、欠片の神気によってあなたは人の心を保てている。…

「刃魔正忍記」のハンドアウトからは、その剣は妖魔を祓う力を持った、何か神聖なものであることも読み取れます。
少なくともPC1とカガリの剣には、そのような力がある(他の十束剣は不明)。

ちなみに…シノビガミとスサノオが同一存在ということは基本p226近辺で語られていますが、その次のp227には、「御剣」について書かれていますね。

・御剣とは、鞍馬神流に伝わる神器である
・スサノオがヤマタノオロチ退治に用いた十拳剣(とつかのつるぎ)であるともされる

人の巻で条件を満たすと手に入るプライズの名前も「御剣」ですし、このシナリオの「十束剣」は明らかにこれ関連なんだよな……。

「十束剣」とは何か?

渡来人・刀匠が十一人の少年少女を魔仭として鍛えたもの。人であり、剣でもある存在で、神聖な力を秘めている。鞍馬神流に伝わっていた神器「御剣」とは、何らかの関係がある可能性が高い。

六大神器は隠忍に奪われて、渡来人の支配する「出島」出現の発端となったわけですが、隠忍の儀式失敗後に渡来人・刀匠が「御剣」の破片を入手して、その破片と少年少女達を材料に「十束剣」を鍛えたのかな、と妄想したりしました。

②なぜカガリを殺さなくてはならなかったのか

早乙女イツキの秘密によれば、プライズとしての「十束剣」は、十束剣キャラクター本人が望めば、他の十束剣キャラクターに譲渡することができるはず。
しかし、PC1の記憶によれば、武器の形となった十束剣を得るには、その十束剣キャラクターを殺害する必要がある。

【早乙女イツキ 秘密】(地の巻)
…あなたが同じ【使命】を持つPCに対して【感情】を獲得した場合、あなたは自らの「十束剣」をそのPCに渡す。…

【PC1の記憶 秘密】(天の巻)
…「神刀・禍狩」を得るため、PC1は親友のカガリを殺害した。…

……受け渡しできるプライズなのに、PC1が禍狩を得るために親友・カガリを殺したって、どういうこと?

このあたりの整合性を取れそうな解釈として、下記のようなことを考えていました。
この解釈だと、正忍記p130のキャンペーンFAQとも矛盾しない。

・人である「魔仭・十束剣」は、自らの裡にある無形の力「十束剣パワー」を、有形の武器「十束剣武器」として取り出して、振るうことができる

・「十束剣パワー」は、「魔仭・十束剣」同士であれば、受け渡すことができる
・この場合、受け渡された側の「十束剣パワー」は強くなるが、だからといって2本目の「十束剣武器」を振るえるようになるわけではない
【例1】PC1の持つ十束剣に「宙刀・異月」が吸収される。この時、早乙女は死なない。また、PC1は「宙刀・異月」を取り出すことはできない。

・「十束剣武器」は、その本人が生きている間は、本人しか振るえない
・「魔仭・十束剣」本人が死ぬと、その亡骸は「十束剣武器」に変じる(無形の「十束剣パワー」として吸収することも可能)
【例2】PC1が「神刀・禍狩」を武器として振るうには、カガリの死亡が必要。

なぜカガリを殺さなくてはならなかったのか?

八岐大蛇を封印する時、「神刀・禍狩」をPC1が振るう必要があったが、カガリの「十束剣武器」である「神刀・禍狩」は、カガリが死ななければ他者には扱えないため。

まあ、NPC十束剣(魔仭)が、PCを契約者として戦うパターンもあるのですが……。

【十束剣たち 秘密】(人の巻)
…また、十束剣たちにプラスの【感情】を結んだPCは、魔仭(基本p141)の契約者となり、クライマックスフェイズで魔仭の能力が使えるようになる。

この場合、NPCは本来の「魔仭」ルールのように、武器に身を変えて、PCに武器を振るわせるのか…?
とか考えるとドツボにはまるので、これはもうあくまで「魔仭」ルールを適用するだけだと割り切って、単にNPC十束剣がPCを援護するような描写を入れようか、と自分は考えていました。

一緒に世界を救おう、と【感情】を結んで決意を増幅したらこれまでできなかったことができるようになった、とかでも良いのかもしれないですが。
でも、親友だったカガリとPC1にできなかったことが、人の巻でいきなりできるようになるの、何か可哀想で……。
カガリが何か手段を遺していたとか、理由付けをしていくのもありですね。

ちなみに…

リプレイ⑦でGMが裁定ミスしたのは、この辺の整理をちゃんとしていなかったせいです。

PC1が「神刀・禍狩」を得るためにカガリを殺害したのだから、十束剣は殺さないと奪えないもの、というイメージが先行してしまっていて。
結果、ガオルンをさっさと殺してしまいました。
……早乙女イツキの秘密をちゃんと読んで!?!?とあの時の自分に言いたい。

…でも、無道は地の巻開始前に死んでそうだから、無道の剣を吸収した「華刀・九龍」も、朧丸の剣を吸収した「神刀・禍狩」と同じく十束剣2本分のプライズだと思い込んでたんだ……!
無道は地の巻開始直後にガオルンに殺された扱い(そして刀匠が両断戦争に介入するために、無道のガワをかぶった)ってことなんですかね?
獅童の死が地の巻開幕なので、無道は少なくともその前に死んでいるはずで、なんかしっくりこないけど。

さて、メインフェイズの戦闘で戦果として選べるプライズは、本来なら1つだけ。
十束剣プライズはドラマシーンで受け渡しが可能なんだから、真夜中シーンと違って、メインフェイズでは、「殺して奪う」のか「殺さずに奪う」のか、勝者が選ぶことができるのが妥当。

それなのに、プライズ2つ渡してNPC殺してしまったのでした……。

でもだって、この辺だいぶ分かりにくいんですよ……!
ガオルンが持ってる十束剣が誰のかっていうのも、消去法でチェックしないと分からないし。

ガオルンのハンドアウトには「十束剣を2本保持している」としか書いてなくて、どのNPCが死んでて、誰に十束剣を引き継いでいるかを改めてチェックしないと分からないんです!
無道のハンドアウトにも、誰に殺されたかとか書いてない!
この時既に脱落しているのが、カガリ、朧丸、山城ユウマ、獅童タケル、無道侑李だってことや、無道以外の十束剣がどうなったかは、ちゃんとどこかのハンドアウトには書いてありますけど、でも~!

言い訳ですけどね。はい。

【両断戦争のルール 秘密】(地の巻)
…両断戦争の勝者は、戦果の選択後、その戦闘で脱落したキャラクターを殺害して「十束剣」を奪うことができる。…

ちなみにクライマックスフェイズでは、↑とあるので、戦果として選べる1つ以外は、十束剣プライズを殺さずに奪うことはできません。
もはや十束剣の力が強くなりすぎて、殺さずに奪うほど繊細な制御ができない、とか理由をつけるのが良いのかも。

……PC1が両断戦争を止めようとしていて、万が一、早乙女イツキと感情を結べなかった場合には、クライマックスで誰か殺さなくちゃいけないかもしれないという地獄。

Q3.なぜカガリは両断戦争を止めようとしたのか

①カガリが十束剣となったのはなぜか

カガリが十束剣となったのは、そもそもは「力が欲しい」と願ったから。

【PC2もうひとつの秘密】(天の巻)
あなたには幼い頃に渡来人・刀匠に連れ去られた兄がいる。
刀匠はあなたと兄を前にして「力が欲しいか」と問いかけ、「欲しい」と答えた兄を過去の時代へ連れ去った。…

カガリとPC2が生きる未来は「荒廃した世界」なので、その世界を変えるために力を欲した、と考えるのが妥当だと思います。

刀匠に連れ去られる前に、行き先か過去だと分かっていたのかは不明。
ただ、隣で刀匠と兄の会話を聞いていただろうPC2が「兄は過去の時代へ連れ去られた」と把握しているので、カガリ自身も、過去に行くことを分かっていたような気はします。

カガリが十束剣となったのはなぜか?

未来の「荒廃した世界」を変えるために力を欲したから。

②なぜカガリは両断戦争を止めようとしたのか

単純に「力が欲しい」だけが目的だったなら、両断戦争の勝者となってシノビガミになれば良い。
ただ、カガリはそうはせず、両断戦争を止めようとしていた。

未来人であるカガリは、何らかの形で「この両断戦争こそが世界の荒廃の原因である」と気づいた、と考えるのが素直ですかね。
だからこそ、力を得ようとするのをやめ、両断戦争を止めようと動き始めたのではないか。

なぜカガリは両断戦争を止めようとしたのか?

未来の「荒廃した世界」を変えるためには、カガリ自身が力を得るのではなく、両断戦争を止めることが必要だと考えたから。

……ここまでは、そんなに疑問点はないのですが……。

Q4.カガリの遺言「最後の一本になったとき、もっと恐ろしいことが起こる」の意味とは何だったのか

①「両断戦争」とは何か

カガリは、争いを止める意思を持ち、PC1に「神刀・禍狩」を用いて八岐大蛇を封印するよう頼みました。
では、前提として、カガリが止めようとした「両断戦争」とはどんなものだったのか、を見ていきます。

【両断戦争のルール 秘密】(地の巻)
…両断戦争は、「十束剣」を束ねた者をシノビガミとするための儀式である。…
…両断戦争の勝者は、戦果の選択後、その戦闘で脱落したキャラクターを殺害して「十束剣」を奪うことができる。その結果、保持する「十束剣」5本ごとに、以下の能力を一つ使用できる。
1.シノビガミになり、魔都東京を支配する。支配すれば死者の復活や記憶の改竄も可能。
2.シノビガミの力を譲渡する。

両断戦争は、十束剣を束ねた者をシノビガミにするための儀式、と言いながら…。
ただ「シノビガミになる」だけなら、十束剣が5本あれば可能なわけです。
しかし、十束剣は11本ある。

【刻阪カエデ 秘密】(地の巻)
…この【秘密】を知る者は、両断戦争の勝者として実行できる能力に第3の選択肢として「3.八岐大蛇の顕現」を追加できる。
この願いを叶えると、「草薙剣」を持つ者の身体を使って八岐大蛇が顕現する。

また、両断戦争の勝者は「シノビガミになる」だけではなく、「八岐大蛇を顕現させる」こともできる。

両断戦争とは何か?

「十束剣」を束ねた者をシノビガミとするための儀式。両断戦争の勝者は十束剣5本ごとに「シノビガミになる」「シノビガミの力を譲渡する」「八岐大蛇を顕現させる」ことが可能。

ちなみに「PC1が神刀・禍狩で八岐大蛇を封印した」時、八岐大蛇が「顕現していた」扱いなのか、そうではないのかは不明。

【PC1の記憶 秘密】
…両断戦争は、PC1が魔仭の一人であるカガリの屍からできた「神刀・禍狩」を用いて妖魔「八岐大蛇」を封印したことで中断となった。…

※リプレイではPC1とカガリが八岐大蛇と戦いに行った、という形にしましたが、別にそうとは限らないですよね。生まれかけていた妖魔を生まれる前に押し込めて封印したのかもしれないし、他にも考えようは色々ありそう。

②では「両断戦争の中断」とは何か

両断戦争の中断について書かれているのは、このあたり。

【PC1の記憶 秘密】(天の巻)
…「十束剣」たちは殺し合う運命を課せられ、両断戦争を行った。
両断戦争は、PC1が魔仭の一人であるカガリの屍からできた「神刀・禍狩」を用いて妖魔「八岐大蛇」を封印したことで中断となった。
「神刀・禍狩」を得るため、PC1は親友のカガリを殺害した。争いを止めたいカガリの意思に沿って。

死に際にカガリは言った。
「ボクたちが争いあい、最後の一本になったとき、もっと恐ろしいことが起こる」…

【早乙女イツキ 秘密】(地の巻)
…両断戦争を止めるためには、クライマックスフェイズ終了時に以下の二つの条件を満たす必要がある。
1.八岐大蛇の封印。「十束剣」を3本以上持った状態で勝者となり封印を宣言すること。
2.十束剣たちの生存。朧丸を含む魔仭「十束剣」が5人以上(※)生存していること。

※注※
オリジナルシナリオのハンドアウトでは5人以上生存ですが、改変シナリオのハンドアウトでは6人以上生存としています。

この2つの秘密やシナリオの展開からは、「両断戦争の中断」=「八岐大蛇を封印すること&十束剣達が一定人数以上生きていること&誰もシノビガミにならないこと」のように読める……んですが……。

八岐大蛇と両断戦争との関係性は、どこにも語られておらず、なぜカガリが「両断戦争を止めよう」とするにあたって「八岐大蛇を封印しよう」と考えたのかが、全然分からなくて……。

しかも、未来のPC1によると、別に八岐大蛇が顕現していなくても、両断戦争は最後まで進んでシノビガミが生まれていた模様。

【PC1 秘密】(地の巻、未来の自分に憑依されていない場合)
…未来のあなたは言う。
両断戦争の結果シノビガミが誕生すれば、PC2が来た破滅の未来へ進むと。
そして破滅を避けるためには、シノビガミが殺す対象としての八岐大蛇の復活も必要なのだ、と。…

【PC1 秘密】(地の巻、未来の自分に憑依されている場合)
…あなたのいた未来には八岐大蛇は現れず、シノビガミの力は暴走した。…

【PCシノビガミ 秘密】(仭の巻)
…制御判定に失敗しても世界は元に戻るが、あなたは妖魔として破滅をもたらす者となる。あなたが『刃魔正忍記 地の巻』でPC1だった場合、この制御判定には必ず失敗する。…

両断戦争を中断することと、八岐大蛇が顕現しないことは、別に直接の因果関係がないのでは?
じゃあカガリが生命を投げ出してまで八岐大蛇を封印した意味って何だったの?

…と思うんですが、正忍記p91には、シノビガミを生み出そうとする刀匠の計画は、カガリが八岐大蛇を封印することで頓挫したかに見えた、としっかり書いてあるんですよね…。
なので、八岐大蛇の封印が、両断戦争中断の何らかのトリガーにはなっているのでしょう。

十束剣が「殺し合う運命を課せられた」のは、八岐大蛇によるもので、八岐大蛇を封じれば十束剣たちの闘争心が減退する、とか、何らかの理屈は適当につけられるかなあ。
地の巻で刻阪カエデが八岐大蛇に憑依されていることを考えると、八岐大蛇も両断戦争に関与してくるのは間違いない。

両断戦争の中断とは何か?

下記の条件を満たす状態のこと。
・八岐大蛇が封印されており、顕現していない
・「魔仭・十束剣」たちが一定人数以上生存している
・シノビガミが顕現していない

さて、カガリが八岐大蛇を封印した元々の思いに立ち返ると、カガリは「世界の荒廃を救いたい」はず。
カガリの最期の言葉は「(十束剣が)最後の一本になったとき、もっと恐ろしいことが起こる」なんですが、そもそも最後の1本にならなくても、5本集めた人がいれば、シノビガミは顕現できてしまいますよね。
そして、未来のPC1によると、そのシノビガミは世界を荒廃させる可能性が高い。

ここに若干の矛盾を感じるわけです。

③第一次両断戦争と第二次両断戦争は、同じものか、別のものか

オリジナルのハンドアウトによると、刀匠の目的は「八岐大蛇を顕現させずにPC1をシノビガミにする」ことなので、八岐大蛇本体は刀匠にとってもそこそこ邪魔なように思われるのが、正直よく分からない……。
と考えていく中で、そもそもカガリが止めた1回目の両断戦争と、地の巻で再開されている2回目の両断戦争は、条件やルールが違う可能性もあるな、と思い至りました。

【無道侑李 秘密】(地の巻)
…あなたの【本当の使命】は八岐大蛇を顕現させず(※)、PC1をシノビガミにすることだ。…

※注※
改変シナリオのハンドアウトでは「八岐大蛇を顕現させず」は削除しています。

【獅童タケル 秘密】
…カガリの死後、関わらないようにそれぞれの生活を送っていた「十束剣」たちは、渡来人「刀匠」によって再び集められた(※)。魔都東京を救うためには、誰かが両断戦争の勝者にならなければならない。…

※注※
改変シナリオのハンドアウト(【両断戦争のルール 概要】)では「両断戦争再開時に十束剣達が刀匠に集められた」といった記載は削除しています。また【獅童タケル 秘密】のハンドアウトは全く別の内容に変えています。

例えば、こういう↓解釈が成り立つ可能性もありますね?

・第一次両断戦争(八岐大蛇あり):十束剣を11本集めればシノビガミになれる
・第二次両断戦争(八岐大蛇なし):刀匠が何かしら操作した結果、十束剣を5本集めればシノビガミになれるようになった

こんなことハンドアウトにも解説にもFAQにも全く書いていないので、ちょっと禁じ手っぽい気もしますが。

「刀匠が十束剣達を再び集めて両断戦争を再開させた」とあるのは、八岐大蛇が封印されたままでも両断戦争が進められる仕組みを、刀匠が思いついた、ということだったのかもしれない?
あ、いやでもそうなると、第二次両断戦争の中断条件に「十束剣を3本以上持った状態で八岐大蛇の封印を宣言する」が入って来るのがよく分からないか?
八岐大蛇の封印を改めて行わないと、両断戦争は止まらない……。
関ヶ原大戦の世界に東京を持ってくることで、神刀・禍狩による八岐大蛇の封印を弱めて、中断されていた両断戦争を継続できるようにしたとか?

ちなみに、カガリによる「両断戦争の中断」と、地の巻~人の巻に至る「両断戦争の中断」が同じものなのか、別のものなのかも、よく分かりません。
カガリによる「両断戦争の中断」では、「神刀・禍狩」や他の「十束剣武器(十束剣パワー)」は力を失っていないように見えます。
けど、正忍記p116によると、人の巻では死者の「十束剣武器」は力を失っているみたいなんですよね……。

もしくは、カガリが八岐大蛇を封印したことで、その後数年間「十束剣」は力を失っていたのかも?
刀匠は東京を関ヶ原大戦世界に転移させることで、何らかの形で「十束剣」に力を取り戻させたのかも?

……いや、天の巻のPC3の秘密からして、別にPC1の十束剣は力を失ってないよな……。
これすらもPC1特有のやつなのか?

考え出すとキリがありません。

「第一次両断戦争」と「第二次両断戦争」は同じものか、別のものか?
「第一次両断戦争の中断」と「第二次両断戦争の中断」は同じものか、別のものか?

同じものだったかもしれないし、別のものだったのかもしれない。

※同条件・同ルールだった場合、「十束剣を5本束ねればシノビガミになれる」ことと、カガリの遺言「ボクたちが争いあい、最後の一本になったとき、もっと恐ろしいことが起こる」に矛盾が発生しかねないため、さらなる肉付けが必要。
※別条件・別ルールだった場合、なぜ別物になっているのか、カガリはそれを察知できなかったのか、等について、さらなる肉付けが必要。

また、第一次両断戦争中断時には八岐大蛇の封印を嫌がったであろう刀匠が、なぜ第二次両断戦争では八岐大蛇を顕現させないように行動するのか?という疑問も依然として残ったままですね。
いや、それとも、八岐大蛇の状態変化には「封印」→「封印解除・顕現待機」→「顕現」があって、刀匠にとっては封印状態も顕現状態も望ましくないってことなんでしょうか?
うーん、わからん。

④カガリはどこから来たのか(カガリの遺言の意味するところ)

カガリの数年後にタイムスリップすることになるPC2は「シノビガミと化したPC1の力で崩壊した未来からやってきた」ので、PC2はまず間違いなく、未来でシノビガミとなったPC1と、同じ未来から来たはず。

…このシナリオでは、過去を変えることで未来が変わる、として扱ってください。PC2はシノビガミによって滅亡した未来を変更するためにやってきました。並行世界として扱ってしまうと、PC2の目的が果たせなくなるため、そのようにしてください。…

正忍記p130にあるこれはPC2のための説明ですが、カガリも同様だろうと思います。

カガリは過去を変えたのか、実際には変えられずに予定調和に進んだだけなのか、カガリの過去改変がPC2の生きる未来に影響したのか、は明確に示されていないので、このあたりに想像の余地がある。
もうここはGMが自由にやってね、ということなのかもしれません。

カガリは「ボクたちが争いあい、最後の一本になったとき、もっと恐ろしいことが起こる」と言い残しています。
ということは、カガリ自身は「魔仭・十束剣が最後の一人になるまで争った結果、荒廃した未来から来た」と認識していたのではないか。
という方向で仮定していきます。

パターン1:カガリがいた未来≒PC2・未来のPC1がいた未来

もしカガリがPC2と同様に「PC1がシノビガミとなり、八岐大蛇が顕現しなかった」未来から来たのなら、カガリは「最後の一本になるまで争わなくても、シノビガミが世界を荒廃させる」可能性を知らなかったことになる。
もしその可能性を知っていたなら、遺言で「最後の一本になるまで争うな」ではなく「誰もシノビガミになるな」と言うべきなので。

【パターン1の例】
・カガリはPC2や未来のPC1と同様「PC1がシノビガミとなり、八岐大蛇が顕現しなかった」未来から来た
・第一次両断戦争は「十束剣を11本集めるとシノビガミになれる」ものだった
・カガリは第一次両断戦争を止めたが、第二次両断戦争では「十束剣を5本集めるとシノビガミになれる」ようになることを知らなかった
・また、カガリは「十束剣を5本集めると八岐大蛇を顕現させられる」ことや、「シノビガミが八岐大蛇を倒せば力の暴走を防げる」ことも知らなかった
・そのため、カガリは八岐大蛇を封印し、両断戦争を中断させれば世界の荒廃は防げると考えた

・「ボクたちが争いあい、最後の一本になったとき、もっと恐ろしいことが起こる」の恐ろしいこととは、シノビガミ顕現→暴走による世界の荒廃

この話は後編で、他の疑問点の検証もした後で、改めてもう一度しますが。
このパターンはちょっと、カガリが情報弱者っぽくて可哀想に思えるんですよね……。

パターン2:カガリがいた未来≠PC2・未来のPC1がいた未来

こちらは、第一次両断戦争と第二次両断戦争は同条件・同ルールだった、と仮定して、なんとか整合性を取ろうとして考えた解釈。

八岐大蛇が封印されていても、結局、十束剣同士を5本束ねたシノビガミが顕現して世界が荒廃するのなら、カガリの死んだ意味って何だったの?
十束剣が5本あればシノビガミになれるなら、カガリはなぜ最後の1本になるまで争うなと言ったの?

…というもやっと感にも対応しようとした結果、ループものになりました!

【パターン2の例】
・カガリ①(ループ1回目)はPC2や未来のPC1と違い「シノビガミが八岐大蛇を倒せなかった」未来から来た
・十束剣が最後の一本になるまで争ってしまった未来においては、最強の八岐大蛇が自動顕現することとなったが、シノビガミは「十束剣」を「天羽々斬剣」として完成させられず、八岐大蛇を倒せなかった
・カガリ①は「十束剣を5本集めるとシノビガミになれる」ことは知っていたが、「シノビガミが世界を荒廃させる」可能性は知らなかった
・そのため、カガリ①は八岐大蛇を何とかすれば世界の荒廃は防げると考えた

・カガリ②(ループ2回目)はPC2や未来のPC1同様「PC1がシノビガミとなり、八岐大蛇が顕現しなかった」未来から来た
・カガリ②は何らかの手段(カガリ①の亡骸である神刀・禍狩との交信など)でカガリ①の記憶を得るが、カガリ①が八岐大蛇を封印したにも関わらず、シノビガミの暴走によって未来は荒廃していた
・カガリ②は「十束剣を5本集めるとシノビガミになれる」「十束剣を5本集めると八岐大蛇を顕現させられる」「天羽々斬剣がないと八岐大蛇を倒せない」ことは知っていたが、「シノビガミが八岐大蛇を倒せば力の暴走を防げる」ことは知らなかった
・そのため、カガリ②は両断戦争そのものを止め、刀匠を倒すことが最善手だと考えた

・「ボクたちが争いあい、最後の一本になったとき、もっと恐ろしいことが起こる」の恐ろしいこととは、万が一の場合の八岐大蛇を倒す手段の消失

上記の例は、改変シナリオの設定になります。
独自設定も大いに含んでいますので、こちらに関しても、詳しくは後編でまた改めて。

後編はこちら↓

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